2020年 11月 の投稿一覧

数学者⑩ ミニレッスン4−1 う〜んとあぁ!

ミニレッスン(10分間)

価値のインストラクションを文字にしておく・今回は、ミニレッスン数学者の技「添え書き」の説明が長くなりそうだったのでメモを作って読むことにしました。書いてみることで「このスキルがなんのために」がさらに明確になりました。毎回のミニレッスン用の説明メモを用意するといいと思います。その際、①スキルの概要、②子どもの例★をつかったスキル価値の説明、③呼びかけの三段階ぐらいがちょうどよく、5分ぐらいで終わる。こういうことはちょっと面倒くさいかもしれないけれど、授業の節々で生きてくるので練習だとおもって積み重ねることで、授業に息を吹き込んでくれます。★これまで解いたことのある魔方陣とつなげて話しました。こういう既有知識とリンクすることは、なにげに大切だと思っています。


【問題】【計画】

ここで、3マスのときの7の組み合わせ(1+2+4しかない!)はまだナイショにしました。これは子どもが自分で発見してほしいし、そこにこそ思考体力を使う価値があるからね。

12の列に目をつけました。2マスしかないから、2つの組み合わせで12をつくるには簡単そうです。「ひたすらかきまくって考える」作戦またでた! 今回、このメモに気持ちをのせること。大事な作戦です。みがいていくと「順番にかきまくる作戦」へと進化する期待大の作戦です。最後にあらためてミニレッスンのう〜んとあぁ!を書くことの確認をしてワークタイムスタート。


ワークタイム 20分

いつもながら、ワークタイムに入って子どもたちが問題へグッと取り組む瞬間がたまらない笑。むずい。「むずい〜」と嘆いている子には、「それはむずいよねー」と、う〜んとメモしている子には、「いいねぇ、メモしている子みーつけた!」と声かけながら、クラス全体の様子を見て回りました。

2年生でも、3口の足し算の和はすぐにでてこない子もいます。やっぱ時間がかかるもんですね。すすまないんだな。ここで思考体力を使っての粘りも実は大切な力の一つです。

こういったペーパーだけのノートに書くだけ勝負の問題では、時間が経つにつれて子どもたちが落ち着かなくなってくることがあります。先生ちょっと焦る。子どもたちの集中も散るので、授業の仕切り直しをし、また穏やかに取り組める空気を作り直しました。


ワークタイム途中の共有

子どもたちはなかなか進んでいない様子だったので、一度みんなと情報交換をしてみようと、授業途中での共有を投げかけてみました。この各自の学習プロセス共有については、僕が今一番関心のあるテーマの一つです。算数数学では答えのやり方や答えの共有(確認?)はするけれど「できなかったやり方(自分が考えもしなかったやり方も含め)」については検証されにくい。実は、ここのできかったやり方の試行錯誤こそ、人が学ぶには必要であり、そこを支援していくことこそが求められるんだと考えています。


一度みんなで手を止めて「これだったらいけそう?ってのはない?」と出し合おうとしても出てきませんでした。「じゃぁ、ダメだった方法はある?」ときくと、二人の子が手を挙げてくれました。こういうときに、「まちがい」をみんなに開いてくれること、しなやかなマインドセットだなと思います。
「アのマスがなし。イに4がはいって。それだと、答えがないってことだよね」「私はためしてみたんだけど。7じゃだめ。ひたすらかくさくせんをやっている最中」といくつか、できないやり方が共有されました。

消しゴムで間違いを消してしまいたい!

できないやり方を残そうとしない子がいます。いやなことは消してしまおう。分かるなぁ、この気持ち。まちがうことに抵抗がある子に共通する点かもしれない。算数数学では、まちがいもできない方法の一つ。一歩進んだ証。これまでの算数授業でもそう繰り返してきたけれど、まだ抵抗がある様子。ここで、できなかったやり方をノートにのこしていかないと、同じ失敗を繰り返すことになっちゃうね。消しゴムで消したがる子にとっては、いい失敗になったんじゃないでしょうか。失敗やできないこともある自分も許せるようになっていく、授業を通してそういうことも育っていけるといいです。


答えを知りたがるときには

一方、答えを知りたがる子も算数には必ずでてきます。「答えさえわかればいい!次にマッハで進める!ほいほいほい」と、きっとこういう直線的で効率的な学びをしてきたのかもしれません。でも、子どもって迷路がスキですよね。答え知っているのに笑。そのゴールまでのみちのりを楽しむものこそがおもしろいのに。そういう子には、「答えの書いてある迷路ってつまらないじゃん」といいながら、「どうしても答え知りたいなら、先生の机にあるよ」と僕の数学者ノートを開いておいてあります。そうすると、「自分で解けるし!」「この問題に本当に答えがあるのかだけ知りたかったんだよ(まけおしみ感MAX)」と、くやしそうにしながらも、だれも見ようとしませんね笑


共有の時間はなし授業のこり5分になり、子どもたちに「共有の時間にする?」ときいてみると、「えええ!」「まだやるし!」と思わぬ反乱が起こりました。かわいい。ひたすら書く作戦の子はいいかんじでノートが進んでいました。でもまだできない。それだけに、スッキリとできてほしい。よし、次回も改めてこの時間をとろうと思うのです。

ひとことでもそのときの感想をのこしておくことは大切なこと。今日の「うーん」と「あぁ!」はどこまでメモできたかな。振り返ってみることにしました。みっちりと、不満!のう〜ん!やできないパターンも書き込んでいる子のノートを紹介して、終わり。さて、次も楽しみです。

授業づくり ミニレッスン4の計画 う〜んとあぁ!をメモしよう(添え書き)

このコマのめあて

  • 算数の問題解決では、その筋道を記録することがあるが、その解いている最中の心情に焦点を当てて、メモすることは推奨されてこなかった。そのため問題解決には解決者の心理面が大きく影響され、自分の考えをメタでつかむ練習にも必要と考えている。閃きやつんのめり(スタック)を気付いて「う〜ん」「あぁ!」とメモしていくことを練習したい。
  • 前時までの問題解決スキル「ふりかえり①〜③」も併せて解決時に使ってみる。
  • 3時間計画(問題を知る→とく→つくる)

レディネス

  • 魔方陣問題で、縦横で足し算をする経験をしている。
  • 同じ数字を重複して記入してしまう。2つ可能性をのこして計算する思考体力に欠け、勘に頼ってしまう。

準備すること

  • 「良問」宮本さんの『考える力を育てる強育パズル』これがスタックしたり、閃きをメモするいは適している良問の一つだと考えた。
  • 問題プリント2枚
  • 問題づくり用のフォーマットプリント。
ミニレッスン4

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数学者の時間⑨ 3−2 ふりかえりのふりかえり

入試も終わり一段落。ついついこういった振り返りはあとになりがちなので、記憶を呼び覚ますためにも、新鮮なうちにメモしておいてよかったです。前回の答えが「パン3枚は8分間で焼ける」ことに落ち着いてしまったので、再挑戦しました。子どもたちにとって身近な道具は「トースター」ではなく「ホットプレート」のほうがよかったのかもしれない。生活経験が遠いと余計な間違えがうまれて本質にたどり着けないことがありますね。この日はちょうどハロウィンの日だったので、仮装したまま授業にいる子もいるのが楽しいものです。


ミニレッスン15分
前回までの確認から。

ワークショップ授業1コマの流れの確認。そしてふりかえりのステップ3つ。①数ややり方が正しかったか?②きっかけをしらべるには、できたできないもメモしておく。③他のやり方は?そこから【計画】にもどって【求めること】【分かっていること】を、そして「1枚でもパンの片面は2分間やける」この昭和トースターの威力?を再確認しました。


算数が苦手な子が「間違ってもいい?」と【分かっていること】を小さな声で発表していました。小さな声で「ドキドキしちゃった」と聞こえてきました。授業の本筋とは別に、こういう瞬間に立ち会えることって、ほっこりするなと思います。


前回の「8分間」になってしまった解答の確認。実際に黒板の前に出てきて前回のように本をパンに見立てて二人に8分間で焼けるモデルを焼けたパン面に赤フセンをはってもらいながら、やってもらいました。前回使用した「おはじき」は使いにくいので、メモできるように破紙を用意しました。


図に描いて表すノート記録

ここで、ひとつ僕から要求を。子どもからはこれまで一切出なかったので、気になっていたノート記録の「図に描いて表す」こと。しかし、この問題でパンを焼く手順を、図で表現するってなかなか難しい。2分+2分+2分+2分=8分といった、式にはできるけどその意味を表す図が足りていませんでした。僕から「図で描けない?」と要求しました。きっと子どもたちは、表麺と裏面を別々で表記するかとおもっていたのですが、まさかの横からのパンの断面図で表現していました。これ、じつは案外すごい表現だなぁと思います。こういうとき、子どもはするすると教師の意図をこえていってしまううれしい悲鳴でした。


すぐに納得しない子

そして、その子は前に出てきて説明をしてもらって改めてわかったのだけれども、「パンが1枚なら1分間で焼ける性能をもったトースター」だと間違って理解しているようでした。「1枚のパンは両面を2分で焼ける」と思っていました。咲くほどの二人の説明と僕からの説得!?を聞いても、最初はすぐに納得しませんでした。そして反芻するように「1枚のパンでもそうなの!?」「1枚のパンでもかかるというと。。。」と、自問しながら、自分の問題への捉え方を変えて言っていました。こうやって、算数問題の答えではなく、プロセスで、理解の修正こそ価値があることだなとあらためて思うのです。こういう子たちを励ましたいし、こういった「できない」ことからの共有を広げていきたいものです。
ふりかえりの①では、数値が正しいかどうかは自分たちでは「正しい」と判断したようです。けれども、③他のやり方が残っています。もう一歩追求したのいので「できるだけあつあつで食べたい!「前回8分より短い、6分でできる!って言った子がいたよ」と、もう一回考えてもらえるように僕から挑発しました。


ワークタイム15分
数学者の時間も5回目。全体のカンファから、個別カンファランスへ少しずつ入ろうと、子どもとのやりとりに時間をかけて進めていきました。理解に時間がかかる子とじっくりと個別カンファランス。自分自身がようやくこの時間がとれるようになったとしんみり。この時間ほんと大切。全体をみながらも、教室はいつものルートを3周できました。


教室では「6分でできた!」の声が聞こえてきました。これってまだ解いている子にとってプレッシャーになるのでしょうか。「きーくやしい。自分でといてみせる」みたいな火花がちっていたようにも感じました。そして、できた子を見にいってみると、ノートにその手順が表せていませんでした(思考が早すぎる)。それでも、やっぱりトースターに1枚パンだと1分で焼けると勘違いをしている子がまだありました。この辺は根強い。問題設定をしっかりと共有することの重要さが身に染みます。6分で方法が見つかった子は、「4枚では?」と次の問題へ進んでいる子もいました。


わかったつもりになってしまう子

ある女の子が、「途中でパンを入れ替えると6分間で焼ける」解決方法を見つけました。どういう手順だったのか、説明をしてもらっていると、そこに他の女子3人組が自然と集まってきました。「あ!すご!」と言いきや、興味を無くしたのか途中でスッと、どっかにいってしまいました。どして? 子どもたちをみていると、こういう不思議な接し方ががよくあります。わかったから、次に進もうとしたのかもしれません。最後まできこうぜ。と僕は思います。わかったつもりは、しっかり理解できていないものです。しかしもしかすると、それでもいいのかもしれません。考えることは答えまですっきりすることではなさそう。何か閃きやヒントをもらえば、あとは自分で進めた方がよさそうです。そういった、誤解を含めて、納得しない子のように、繰り返し問題へアタックし直して考えを修正する機会があることの方が、答えを出すよりもよほど価値がありそうです。


全体の理解をはかりながら進める

共有10分 問題解決できてしまった子の説明は、それがわかっていない子にはとてもわかりにくい。このあたりが、解決方法の共有する時間をむずかしくさせています。もしかすると、この時点での共有だとすでに、手遅れなのだと思うようになってきました。開始5分間で一度共有してもいいくらいかも。もっと途中で、解決案の方向性を共有することそのものに、意味があるんではないでしょうか。


そしてよくあるのが「自分の解いた考え通りに説明すれば理解してくれる」と思ってしまっていること。まぁ、これは教員でさえありそうです。2年生の発達段階ではまだ相手の理解にそって、伝え方を変えていくことはなかなか至難の業。このあたりをじっくりとクラスの文化、そして今後、友達と教え合う「ピアカンファラス」へつなげていけるきっかけにしていきます。


まずは僕が、途中途中で子どもの説明を止めて、説明を確認していきました。いつもは算数で活躍していない二人が「6分間でできたできた」と嬉しそうだったので、前に出てきてもらいました(こういうのが嬉しい)。このあたりの説明はとてもむずかしく、他の子がわかっているかどうかがなかなか見えてこない。僕がこまめに止めながら、付いてこられない子がいないように、かつ、説明している子達が突っ走らないように進めました。このあたりは、ワークショップとはいうものの、一斉指導の授業技術がものをいいますね。


分かった気になっているような気がして、説明しなおしてもらいました。さらに実際にみんなで6分間でパンを焼く作業を実際にやってみることにしました。これがよかった。あたまで分かっても、手を使ってわかることは別なんだなぁ。ある男の子が「1こおいとく」、それに合いの手をいれるように他の子が「もうひとつをいれる」と話し始め、みんなで取り組みました。「すっきりしたー!」の声がやっとでてきました。「4枚でも、8分だよ」までいきました。


ミニレッスンふりかえりのふりかえり

ふりかえりの①「今日はつかった数とやり方」を確認しました。ふりかえり②「とけたきっかけ」はメタで振り返るのは難しいもの。ノートがそこを支えてくれます。「できた人はどこでひらめいたの?」ときくと、「パンをぬこうとしたとき」と教えてくれました。どうしてそこを思いついた?と聞いてしまいましたが、そこを2年生が説明するにはさらに時間がかかる(3枚のパンの組み合わせはあとは、抜くことしかありえませんが、それを説明するのは時間もかかってしまう判断で)ので、さらりと流しました。


最初、この授業が「ほんとにこれが【ふりかえり】のミニレッスンにふさわしいのか?」と考えてしまう場面もありました。前回は8分。ふりかえりをすると6分でのやり方も見つかりました。ふりかえりを通して、もっと問題を深く理解することがあります。しばらく、パンは両面で焼けるトースターしか使いたくありません。


これは超おすすめ。チーズトーストを焼くには今年一番の買い物でした笑。