自分で考え、判断する教師がエビデンスを批判的に使え、教室文脈にいかすことができる 1/3

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先日の学習会LAFTの参加はオンライン参加を含めて計17名。次回は11月18日。いよいよ具体的な授業づくりに活かす計画です。興味があったら、声をかけてください。告知終了〜。

エビデンスの昨今

「授業に教育エビデンスを活用するには!?」と、その是非を含めて勉強しはじめました。エビデンスとは「科学的根拠」とのこと。。最近のビジネスシーンでは「エビデンスを示せ!」と怒号!?が飛び交うようです(学習会参加者談)。スラビンという研究者が2002年に、エビデンスに基づく教育(Evidence-Based Education,EBE)を提唱し、今、到来しつつあるのは「教育における科学革命」らしいです。世界でも、この科学的根拠に基づいて教育をしていきましょうということが昨今の流れになりつつあります。エビデンス? カニデンス? ピザーラお届けではありませんよ。

ハッティブーム

今回のテーマ本は、オーストラリアメルボルン大学のジョン・ハッティさん『学習に何が効果があるのか』です。これを半年の間、5回にわたって読み込んで授業にどのようにいかせるのか、いかせないのかを検討していきます。ハッティさんは、教育エビデンスを示し、授業方法や教師のはたらきかけといった現場サイドにまで踏み込んだ具体的な提案をした人で、少し前には賛否両論含めてハッティ・ブームが世界では起こっていたようです。はい。日本ではあんまりそういう風は残念ながら感じられませんでした。僕だけかもしれませんが。。。

ハッティの研究内容

ハッティさんは、宿題や少人数指導、フィードバックなどの様々な教育的要因や介入に対して、なぜ効果があるのか、またはなぜ効果がないのか、教育心理学をもとに説明を試みました。これは、「エビデンスはこれこれこういうものですよ!」と効果のある品目を示して終わりの研究とは、明らかに異なり、エビデンスを扱うことに対して、とても慎重にしている点がとても好印象。そして、本の中では、教師が学習者に対する影響力(汝影響力を知れ!)と、フィードバックを授業の中心におきました。

ハッティの研究方法

ハッティの功績は、エビデンスを求めるに当たって、英米圏の50000もの実証研究をメタ分析をして、統合的にエビデンスに効果量を当てはめました。

強力で信頼度の高いエビデンスを明らかにするため、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial,RCT)とそれらを統合的に分析するメタ分析をしました。RCTは医療研究の分野では、とても信頼厚い調査方法です。RCTは、無作為に選んだ2グループにプラシーボ(にせ薬)と本物の効果ある薬を与えて、原因と結果を明確にした、それ以外の影響することを排除した、効果のあるエビデンスを示していく方法です。そのRCT調査された論文を集めまくって、平均値や共通項をみつけるメタ分析を行いました。ハッティの圧倒的な量の量的研究に頭が下がります。

また、ハッティはその明らかとしたエビデンスに効果量を当てはめました。例えば、

「学級規模(d=0.21)」が学力に与える効果は一貫して低い(Hattie、2006)

ことが示されています。なぜなら、「小規模学級を担当する教師が大規模学級でおこなってきたことと同じような方法による指導を行い、小規模学級の利点が活かされていない(Finn,2002)」からでした。教室の人数が少なくなることで、明らかに学習環境は使いやすいものにはなりますが、教え方がいつまでたっても変わらなければクラスを少人数にしても学習の効果は変わらないということです。

このようにハッティは、教育エビデンスの効果量に数値基準を示しました。d=0.2以下が効果が低く、d=0.2からd=0.4が効果が中程度であり、指導する人によって差がでてくるものです。d=0.4以上が非常に効果が高いものです。

エビデンスを使うにはリテラシーが必要

「んじゃ、細かいこと言わないで、効果の高いものをじゃんじゃんエビデンス使って授業すればいいじゃん!」ってなりそうですが、実は、そんな簡単なことではなさそうです。

結論を言ってしまうと、自分で考え、判断する教師がこそが、エビデンスを批判的に使え、教室文脈にいかすことができるからです。

実は、これらのエビデンスの扱い方は本当に様々な批判も多くあり、現場の教師がエビデンスを有効に活用してくためには、まずは、エビデンス・リテラシーを身につけていく必要がありそうです。エビデンスを活用する教育には、かなり慎重にならざるを得ない現状です。その批判を大きく分けると、研究機関による「教育研究側の問題」と学校現場での「教育実践側の問題」があるからです。次回は、この二つの点について考えていきます。

参考文献

  • 杉田浩崇・熊井将太(編)(2019)「エビデンスに基づく教育の闇を探る 教育学における規範と事実をめぐって」春風社
  • ジョン・ハッティ(著)、山森光陽(訳)(2018)「教育の効果:メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化」図書文化社
  • ジョン・ハッティ(著)、原田信之(訳)(2017)「学習に何が最も効果的か―メタ分析による学習の可視化◆教師編」 あいり出版
  • 今井康雄(2015)教育にとってエビデンスとは何かーエビデンス批判をこえてー
  • 久富 望(2019)「効果的な教育」のエビデンスの責任と将来性 日本カリキュラム学会第30回大会におけるハッティの研究に関する議論を基に
  • 平成29年度文部科学省委託調査「教育改革の総合的推進に関する調査研究」エビデンスに基づく教育政策の在り方に関する調査研究報告書
  • VISIBLE LEARNING Hattie Ranking:252 Influences And Effect Sizes Related To Student Achievement https://visible-learning.org/hattie-ranking-influences-effect-sizes-learning-achievement/
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