数学者の時間⑨ 3−2 ふりかえりのふりかえり

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入試も終わり一段落。ついついこういった振り返りはあとになりがちなので、記憶を呼び覚ますためにも、新鮮なうちにメモしておいてよかったです。前回の答えが「パン3枚は8分間で焼ける」ことに落ち着いてしまったので、再挑戦しました。子どもたちにとって身近な道具は「トースター」ではなく「ホットプレート」のほうがよかったのかもしれない。生活経験が遠いと余計な間違えがうまれて本質にたどり着けないことがありますね。この日はちょうどハロウィンの日だったので、仮装したまま授業にいる子もいるのが楽しいものです。


ミニレッスン15分
前回までの確認から。

ワークショップ授業1コマの流れの確認。そしてふりかえりのステップ3つ。①数ややり方が正しかったか?②きっかけをしらべるには、できたできないもメモしておく。③他のやり方は?そこから【計画】にもどって【求めること】【分かっていること】を、そして「1枚でもパンの片面は2分間やける」この昭和トースターの威力?を再確認しました。


算数が苦手な子が「間違ってもいい?」と【分かっていること】を小さな声で発表していました。小さな声で「ドキドキしちゃった」と聞こえてきました。授業の本筋とは別に、こういう瞬間に立ち会えることって、ほっこりするなと思います。


前回の「8分間」になってしまった解答の確認。実際に黒板の前に出てきて前回のように本をパンに見立てて二人に8分間で焼けるモデルを焼けたパン面に赤フセンをはってもらいながら、やってもらいました。前回使用した「おはじき」は使いにくいので、メモできるように破紙を用意しました。


図に描いて表すノート記録

ここで、ひとつ僕から要求を。子どもからはこれまで一切出なかったので、気になっていたノート記録の「図に描いて表す」こと。しかし、この問題でパンを焼く手順を、図で表現するってなかなか難しい。2分+2分+2分+2分=8分といった、式にはできるけどその意味を表す図が足りていませんでした。僕から「図で描けない?」と要求しました。きっと子どもたちは、表麺と裏面を別々で表記するかとおもっていたのですが、まさかの横からのパンの断面図で表現していました。これ、じつは案外すごい表現だなぁと思います。こういうとき、子どもはするすると教師の意図をこえていってしまううれしい悲鳴でした。


すぐに納得しない子

そして、その子は前に出てきて説明をしてもらって改めてわかったのだけれども、「パンが1枚なら1分間で焼ける性能をもったトースター」だと間違って理解しているようでした。「1枚のパンは両面を2分で焼ける」と思っていました。咲くほどの二人の説明と僕からの説得!?を聞いても、最初はすぐに納得しませんでした。そして反芻するように「1枚のパンでもそうなの!?」「1枚のパンでもかかるというと。。。」と、自問しながら、自分の問題への捉え方を変えて言っていました。こうやって、算数問題の答えではなく、プロセスで、理解の修正こそ価値があることだなとあらためて思うのです。こういう子たちを励ましたいし、こういった「できない」ことからの共有を広げていきたいものです。
ふりかえりの①では、数値が正しいかどうかは自分たちでは「正しい」と判断したようです。けれども、③他のやり方が残っています。もう一歩追求したのいので「できるだけあつあつで食べたい!「前回8分より短い、6分でできる!って言った子がいたよ」と、もう一回考えてもらえるように僕から挑発しました。


ワークタイム15分
数学者の時間も5回目。全体のカンファから、個別カンファランスへ少しずつ入ろうと、子どもとのやりとりに時間をかけて進めていきました。理解に時間がかかる子とじっくりと個別カンファランス。自分自身がようやくこの時間がとれるようになったとしんみり。この時間ほんと大切。全体をみながらも、教室はいつものルートを3周できました。


教室では「6分でできた!」の声が聞こえてきました。これってまだ解いている子にとってプレッシャーになるのでしょうか。「きーくやしい。自分でといてみせる」みたいな火花がちっていたようにも感じました。そして、できた子を見にいってみると、ノートにその手順が表せていませんでした(思考が早すぎる)。それでも、やっぱりトースターに1枚パンだと1分で焼けると勘違いをしている子がまだありました。この辺は根強い。問題設定をしっかりと共有することの重要さが身に染みます。6分で方法が見つかった子は、「4枚では?」と次の問題へ進んでいる子もいました。


わかったつもりになってしまう子

ある女の子が、「途中でパンを入れ替えると6分間で焼ける」解決方法を見つけました。どういう手順だったのか、説明をしてもらっていると、そこに他の女子3人組が自然と集まってきました。「あ!すご!」と言いきや、興味を無くしたのか途中でスッと、どっかにいってしまいました。どして? 子どもたちをみていると、こういう不思議な接し方ががよくあります。わかったから、次に進もうとしたのかもしれません。最後まできこうぜ。と僕は思います。わかったつもりは、しっかり理解できていないものです。しかしもしかすると、それでもいいのかもしれません。考えることは答えまですっきりすることではなさそう。何か閃きやヒントをもらえば、あとは自分で進めた方がよさそうです。そういった、誤解を含めて、納得しない子のように、繰り返し問題へアタックし直して考えを修正する機会があることの方が、答えを出すよりもよほど価値がありそうです。


全体の理解をはかりながら進める

共有10分 問題解決できてしまった子の説明は、それがわかっていない子にはとてもわかりにくい。このあたりが、解決方法の共有する時間をむずかしくさせています。もしかすると、この時点での共有だとすでに、手遅れなのだと思うようになってきました。開始5分間で一度共有してもいいくらいかも。もっと途中で、解決案の方向性を共有することそのものに、意味があるんではないでしょうか。


そしてよくあるのが「自分の解いた考え通りに説明すれば理解してくれる」と思ってしまっていること。まぁ、これは教員でさえありそうです。2年生の発達段階ではまだ相手の理解にそって、伝え方を変えていくことはなかなか至難の業。このあたりをじっくりとクラスの文化、そして今後、友達と教え合う「ピアカンファラス」へつなげていけるきっかけにしていきます。


まずは僕が、途中途中で子どもの説明を止めて、説明を確認していきました。いつもは算数で活躍していない二人が「6分間でできたできた」と嬉しそうだったので、前に出てきてもらいました(こういうのが嬉しい)。このあたりの説明はとてもむずかしく、他の子がわかっているかどうかがなかなか見えてこない。僕がこまめに止めながら、付いてこられない子がいないように、かつ、説明している子達が突っ走らないように進めました。このあたりは、ワークショップとはいうものの、一斉指導の授業技術がものをいいますね。


分かった気になっているような気がして、説明しなおしてもらいました。さらに実際にみんなで6分間でパンを焼く作業を実際にやってみることにしました。これがよかった。あたまで分かっても、手を使ってわかることは別なんだなぁ。ある男の子が「1こおいとく」、それに合いの手をいれるように他の子が「もうひとつをいれる」と話し始め、みんなで取り組みました。「すっきりしたー!」の声がやっとでてきました。「4枚でも、8分だよ」までいきました。


ミニレッスンふりかえりのふりかえり

ふりかえりの①「今日はつかった数とやり方」を確認しました。ふりかえり②「とけたきっかけ」はメタで振り返るのは難しいもの。ノートがそこを支えてくれます。「できた人はどこでひらめいたの?」ときくと、「パンをぬこうとしたとき」と教えてくれました。どうしてそこを思いついた?と聞いてしまいましたが、そこを2年生が説明するにはさらに時間がかかる(3枚のパンの組み合わせはあとは、抜くことしかありえませんが、それを説明するのは時間もかかってしまう判断で)ので、さらりと流しました。


最初、この授業が「ほんとにこれが【ふりかえり】のミニレッスンにふさわしいのか?」と考えてしまう場面もありました。前回は8分。ふりかえりをすると6分でのやり方も見つかりました。ふりかえりを通して、もっと問題を深く理解することがあります。しばらく、パンは両面で焼けるトースターしか使いたくありません。


これは超おすすめ。チーズトーストを焼くには今年一番の買い物でした笑。

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