しぜん広場から学んだこと

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いよいよ分散登校も終わり、今日から学級全員、一同に介して顔合わせができた。今学期はじめてのこと。子どもたちもワクワクしていた気持ちと緊張の半分だったと、今日のふりかえりで教えてくれた。

さっそくいつものように、みんなでしぜん広場へ遊びに行った。ターザンロープにゆられ「イガせん、押して、押して」とせがんでくるので、大人の本気を教えるべく、おもいっきり押し上げた。その勢いで、大きくゆれたブランコとその子は樹木にまで足が届き、驚きながら大笑いをした。

そして「なんか甘いいい匂いがするね」と。ふんわりとやわらかい香りが漂ってきた。先週末のターザンブランコでは、まだその樹木は深緑色の葉っぱだったが、今朝はキレイなオレンジ色の花をつけていた。この週末で一気にキンモクセイの花が開花したのだ。遠目に校長先生がこっちを向いて笑って、写真を撮っていた。

この1年半は何か新しい教育実践がなかなかできていない。勤める学校は首都圏ということもあり、通勤、通学の蜜を避けるため、時差登校を続けている。そのため、これまであった潤沢な授業実践の時間も、なかなか確保されないでいる。しかしその中でも細々と1年以上取り組んできていることがり、それが毎朝のしぜん広場の時間。

こんな都会の小さなしぜん広場でも、四季折々の変化を五感を通して充分に感じられることを知った。これまで本で読んで分かって気になっていたことが、経験を通して初めてわかることが多い。

学生時代の子どもたちとのキャンプ経験をいかし、元はといえば自然教育をやりたかった。教員一年目は「県で自然豊かな秩父の奥地に勤務したい」と希望していたことを思い出した。しかし「本当に自然教育が必要なのは都市部ではないのか」と、なんなく面接担当者に諭され、しぶしぶと都会の学校に勤務することに。と、思いきや幸運なことに配属されたのは、その中でも学区には信号一つ(しかも歩行者信号!)の小規模校だった。校舎は田んぼの真ん中にあり、田植えの時期になると、カエルの合唱が深夜まで聞こえてきた。今でもカエルの鳴き声を聞くと、教室の窓を開けて(扇風機さえなかった)、授業準備と奮闘していたあの頃を思い出す。

しぜん広場の子どもたちは、池で泳いでいる小さなカエルたちを小さな手で捕まえるのに夢中。「手がぬるぬる」と嬉しそうに見せてくれる。「つかまえたけど、足が曲がった」と、池に逃がしてあげるとカエルは白い腹を上にして沈んでいった。ぬるぬるや繊細さ、こういう自然を普通に味わうことを大事にして行けたらいいなと思う。

将来に必要なあのコンピテンシーやあのスキルを磨くためといった、アプローチとは異なるかもしれない。けれども、自然に思いを向けたり、感じたり、今しか学べないこと、その根っこの部分を大切にしていきたい。コロナ禍により、世間がオンライン授業やGIGAスクール祭り盛り上がっている中、少しスピードを落として、こういった豊かな時間を子どもたちと味わうことを忘れないようにしよう。

子どもたちの中には「しぜん広場に毎日行くのはいいとしても、雨の日にもどうしていくのよ! 晴れの日だけでもいいでしょ」と詰問してくる子もいる。クラスのみんなに同じ事を問い返してみると「雨だともっと楽しいじゃん。さぁ行こう」と勢いづくのが、この1年間の成果だと自負したい。

先週は雨が多かったので、傘をさして行くことに。まだ着替えも持ってきてないから、そんなに汚すなよって言ったけど、無理。築山のぬかるみでさっそく転び、背中とお尻が泥だらけ。池の中に両足を突っ込んで、今がシャッターチャンスだと写真を催促する子もいた。そしてその横で傘をさして、それを楽しそうに見ている子たちもいる。それでいいと思う。

しぜん広場から学んだことなんて何もないかもしれないけど、たくさんありそうだ。

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