母に内緒で買ってくれた祖父の瓶ラムネ

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どこに出かけるあてもなく、のんびりと休校期間中のように過ごした夏休みが終わった。最後の数日は、例年通りの長い会議の連続であったが、自分たちの学校自分たちの手で作っていくという、そのためにはかけがえのないオンライン会議時間であった。

さて、この夏休み、炭酸三昧の日々だった。以前にも書いたことだが、アルコールが好きなのではなく、炭酸が好きだったという事実が発覚。この一か月は、「自分にとってどのような炭酸が良い炭酸なのか?」を問い続けた日々となった。

スーパーやコンビニに買い物に行くたびに、様々な種類の炭酸に手を伸ばしてみた。天然水でできた炭酸や天然水に天然炭酸を入れたもの、浄水した水に炭酸を入れたものなど様々な種類があることもわかった。

結論から言えば、どの炭酸にも貴賎はないということだ。かっこよく言えばそういうことだ。本音で言えば、よく分からないということだ。つまり味は僕にとっては大した意味を持っておらず、炭酸の持つのどごしや爽やかさ、それが僕にとっての炭酸の価値だとわかってきた。

とはいうものの、どのような炭酸が良い炭酸なのか? これには確信が一つある。それは今は亡き祖父がこっそりと買ってくれた炭酸が良い炭酸だ。

何かと口うるさい母は、子供の頃の僕に「炭酸を飲むと骨や歯が溶けるからやめなさい」と繰り返し口を酸っぱく言い聞かせていた。しかし、やめろと言われれば言われるほど好奇心が増すもの。

おじいちゃん子だった僕は、自転車の後ろに乗せられて毎日のように駄菓子屋に連れてってもらっていた。そこでは「お母さんには内緒だぞ」と、あの瓶ラムネをこっそりと飲ませてくれた。 その横で祖父は、麦わら帽子をうちわ代わりにして暑い日差しの下で、ラムネをぐびぐびと飲み干した。

最初は恐る恐る飲んだのを覚えているが、パチパチとのどで弾ける音やキラキラ輝くあのビー玉、すぐにラムネの虜となってしまった。もう骨も歯もすべてが溶けてもいいと思っていたはずである。

以来ことあるごとにラムネ、コーラ、そしてビールから炭酸水へと変遷してきたが、骨や歯が溶けることもなく今は健康にこうして生きていることができている。

この夏「どうしてこんなに炭酸は好きなんだろう」そう思いながら、飲んでいたその答えがわかった気がする。僕にとっての一番のおすすめの炭酸は、母に内緒で買ってくれた祖父の瓶ラムネである。

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