『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』9章 一人ひとりをいかす授業を可能にするクラス作り 

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この章は学級で1人ひとりをいかす教室実践に取り組むための「小さくはじめるスモールステップ」がまとめられていました。なにか、新しい実践に取り組むときには、こういうガイドがあると、よけいなヤケドしなくてすみますね。この章にあるチェックリストは、案外ベテランの教師が無意識にやっていることが多くありそうです。ビギナー教師にとっては、このリストをふりかえるだけでも、クラスはぐっと落ち着くはずです。おすすめの章です。

さて、1人ひとりをいかす実践では、なによりもはじめてみる!「小さく」ってことが大事です。その一例を挙げてみると、1人ひとりをいかす教室では、それぞれの活動がそろっていません。だからこそ、集中できるように、また指示が通るように、余計なトラブルが起こらないように「静か」を基本とします。これはオランダで以前みてきたイエナプランの教室もそうでした。こういう「地固めの活動」があって、教師はあわてないで落ち着け、ばらばらなことに安心して教室に寄り添う人としていられるんだと思います。わちゃわちゃしていると、クラスが荒れているようにもみえて、余計心配してしまうものです。

 

全員で静かに取り組む活動を体験したのち、それぞれ別の課題で静かに取り組む活動へとスムーズに移行していく。こういう足場かけの実践って、案外いいかげんに語られることが多いけれども、すごく慎重に書かれています。こことても大事だと考えています。こういうステップは意識して丁寧にしているところだったりもするな。こういう地固めの活動があって、「ゆっくり確実に成長する」ですね。

“よく考える前にたくさんのことに手を出してしまう事は、失敗や挫折をもたらすだけです。小さくても確実に始めることが成功もたらします。”(P184)

ここね。そのとおりなんです。けど、よく考えるって視点は、知識としてやることや考えることが分かっていたとしても、自分の中でハラオチしている知恵へと結晶化されてはじめて、「よく考える」ことができます。ここまで記述されてはいないけど、何か新しい実践をつくりあげていくのには、やっぱり時間のかかるものです。

この章には、小さくはじめるためのリストはたくさんあるんだけど、その中でも特に気になったところはここ。

“生徒ができるようになったその証拠は何か?”P185

これって、教師にとって教えることが明確でないと、どんなアウトプットかまでは描けない。海外の文献では、よくこういった「証拠」っていいかたするけど、まさにそうだなー、と思うのです。逮捕しました!でも、証拠なーし。これ、警察だったらとんでもないこと。けど、教育では案外まかりとおってしまっているのかも…。

長いつきあいを覚悟する3ルーティンに、①生徒と最初に、そして頻繁に話をする、②生徒を力づけ続ける、③分析的であり続ける、とあります。その中でも、②の生徒を力づけ続けるっていいなぁと思うのです。

“教師が自分でしなくてもいいことを探す。

机イスの移動

フォルダ、資料の回収

振り返りチェックの効果的に

後片付け

自分の成長を記録しているか

学習目標を設定できているか

自己評価できているか” P189より

読んでみると、なにかエンパワーメントするニュアンスではなくて、なにか「自分でやれることを任せていく」ことが、力づけるってことなんです。学習者にオーナーシップをいかにもわたせるのか?それが、そのまま学習者を力づけちゃうって事なんですね。おもしろい。

“時間は限られていることを生徒が理解できるようにしてください。時間を賢く使うことはクラスの大切な倫理です” P194

生徒が教師の指示を聞いていてよくわかんないとき、サポートを得るときの方法を決める指針もルールとして大切だと思います。これだけでも、クラスはぐっと落ち着くはずです。

“1 よい聞き手になること。聞くことに集中させる。

頭の中で再生させる。誰かにまとめさせる。

2 RICE、思い出す(recall)イメージする(imagine)、友達に聞く

(check)、その日の専門家に指名された人に聞く(expert)。

3 ①と②やってだめだったら。そこでいよいよ教師へ質問。

ジャマしたり、ただ、待っているのもダメ。”P193

最後に保護者とのかかわりが書いてあります。

“保護者に一緒に歩んでもらう

①期待することを尋ねる。

②説明する。

③継続して、カリキュラム=親の願い、を伝える。

依頼する。一緒に参加する。プロジェクトに参加する。大人も時間を割く価値があること。宝の山。”P200

ここ数年、こういうところが課題になっていくので、相互に理解しあいながらすすめていけるようにしていきたい。その指針のひとつとして使わせてもらいます。

計画を実践にうつすための具体的なポイントが紹介されています。定期的に、読み直してみる章になりそうです。

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