「ちがう」ことは「当たり前」の学校を見学した

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先日、長野県にある「しなのイエナプランスクール大日向小学校・大日向中学校」を見学させてもらった。

そこには、かつて僕が夢見ていた子どもたちの姿があった。教室はどれも居心地が良く、静かで落ち着いた雰囲気の中、子ども一人ひとりが大切にされていた。

子どもたちは実に多様だった。人懐っこい子もいれば、マイペースな子もいる。それぞれの違いを尊重し合い、異なる個性が「当たり前」として受け入れられている空間だった。一日中参観させてもらい、いろんな子どもたちと話をする中で、子どもたちが自分たちの学校に自信を持っていることが伝わってきた。

僕自身はその場面に立ち会えなかったが、1・2年生の教室でサークル対話が行われたときのエピソードを同僚から聞いた。グループリーダー(先生)が席を外していた間、子どもたちは自分たちでウクレレを弾きながら歌い、自然と集まって語り合ったという。その場では、お互いの異なる意見や立場に耳を傾け、「ちがい」を大切にしようとする姿勢が1・2年生の姿に見られたそうだ。同僚の話を聞き、その光景を想像すると、とても心が温まる思いだった。

僕は以前、イエナプラン教育の20の原則に基づいてNPOを立ち上げ、活動に関わったことがある。その原則は「人間とは何か」「社会とは何か」「学校とは何か」という本質を問い直すもので、日本の学校もこうなればいいなと憧れていた。

大日向小中学校では、懐かしい先生方との再会も束の間、すぐに子どもたちが生活している空間を朝の会から見学させてもらった。サークル対話では、子どもたちが関心のある話題を中心に語り合い、しっとりとした雰囲気の中で一日が柔らかく始まる様子が印象的だった。

続いて見せてもらったのがブロックアワー。子どもたちは一人ひとり自分の課題に向き合い、格闘している姿が見られた。この学習時間では、1週間ごとに課題が提示され、それを自分で選んで形にしていく。この「1週間単位」という仕組みが、個々の子どもたちの違いを大きな差とすることなく進めるための絶妙な設計となっていた。

もちろん、ここまでの学校づくりが順調に進んだわけではなく、さまざまな試行錯誤を経て現在の形になったと、校長の久保さんが話されていた。久しぶりにお会いできて、本当に嬉しかった。

イエナプランの理念を大切にしながらも、「じゅうたんの部屋」など日本独自の取り組みも工夫されていて、常に改善を重ねながらより良い学校を目指している姿があった。その過程そのものが、「学校している」ということなのだと実感させられた。

午後の教員研修では「数学者の時間」の研修をひとつ担当させてもらった。「ぜひ取り組んでみたい」と声をかけてもらい、じっくり話をする機会もあった。あまりの楽しさに夢中になりすぎて、一緒に見学に行った仲間たちは僕を置いて先に帰ってしまったのも、今となっては良い思い出かな笑。

ブロックアワーの学習内容や教師たちの願い、そして子どもたちと共に描いていきたい教室の姿は、悩みながらも現在進行形で形づくられている。それだけに、「できる・できない」という能力主義的な学習観とは異なる「数学者の時間」のような実践が役立つ可能性を感じている。

近くイエナの中高学校も新設されるとのこと。その建学の精神にイエナプランの思想が根付いていることで、どんな困難な局面でも支えられ、きっと上手くいくのだろうと勝手に想像している。

それにしても、学校の枠組みを根本から捉え直すような実践ができていない現状を深く反省した。自分の実践の小ささを改めて痛感すると同時に、今回の見学がとても良い学びの機会となった。

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