久しぶりに数学者の時間が再開した。
いつもはなにかを学んだり、身につけたりする算数授業とちょっと異なり、この数学者の時間は、考えることを楽しむ時間。もちろん、できなくてもぜんぜんOKだし、まちがったほうが実はよく考えている。
子どもたちは「あぁ、ひさしぶりの数学者だ」と、普段の算数とはちがった学ぶモードから考えるモードに頭のチャンネルが切り替わっている様子だった。
今回はこの問題を選んでみた。この問題は6年生にふさわしく、二重の難しさをもっていると考えている。一つ目は問題の世界に入れるか。二つ目は、頭の目隠しをとれるかである。
一つ目の「問題の世界に入れるか」。
この砂漠問題はていねいに「計画」づくりが必要な問題。ここにつまづいてしまうと
「そんなの1日分の食事を二人でわければいい」
「一人だけ生きて帰ればいい」
「何度もスタートに戻って食料を調達して、なんども食料をうめまくればいい」
など、そもそもの問題設定が崩壊してしまう。
数学的な文法に乗れない子は、現実的に考えてしまい、限定された条件下で考えるおもしろさが味わえない。問題にのれない状況がうまれてしまう。
そこで「求めること」にあわせて「わかっていること」をひとつひとつ確認し、丁寧にひもといていくことで、この砂漠の世界設定にのれるようにする。特に「2人が同時にスタートする」ところは条件として落としてはいけないところだ。
僕は問題を選ぶときに、自分で解いて
「こういうつまずきがでてくるだろうな」
と予想しながら準備するが、僕の予想の斜め上をいくのが子どもたちの思考。このあたりは「あたってくだけろの精神」で、実際に砕け散って、その経験をつみかさねているところ。
授業の後半、数人が「わかった!わかった!」「もしかしてこうかな」と嬉しそうに解答例を説明しにきてくれる。
答えは僕の机にもあるので、自分で答え合わせにいけばいい。それなのに、このわざわざ伝えたくなる何かがうまれてしまう。そう。共有したくなっちゃう。いいたくなっちゃう。こんなとき、僕は3人ぐらいに分身してケンシロウよろしく夢想転生できるといい。ホワチャ〜!
ここが数学者の時間のやっていて、おもしろいところのひとつ。いつもの算数授業で、分かったときはひっそりとほくそえむぐらいなのに。。。
この砂漠問題は、とくにクラスでやんちゃな子ほど、食いついてきた。素直でかわいいなと思う。もちろんできなかった子はまだ大勢いて、「次こそは」「もっと考えたい」と来週を楽しみにしてくれているようだった。
あしたに続く
